[コメント] ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
おとぎ話としての完成度は高い。本作はベンジャミンと周囲の人間との出会いと別れをハートウォーミングタッチで描き続ける。ベンジャミンもママも恋人も彼が出会う多くの人間も彼の特異体質に対して寛容であり、その過剰な寛容さがあるがゆえに本作は甘いおとぎ話として成功している。
しかし、本作の観賞後に残る物足りなさは何だろう。原因は作品に充満するその「寛容さ」ではないだろうか。周囲が寛容であるがために、ベンジャミンの体質の異常性が埋没している。あんな時間逆行人間が存在したならばそれこそもう世間は大騒ぎで、CIAやらマッドサイエンティストやら悪の犯罪組織やらがわんさと登場して『REX』『北京原人』なみのドタバタ騒動になるのが普通の流れであろう。その類の社会との軋轢を描かないのであれば、わざわざベンジャミンにあそこまで数奇な運命を背負わせる必要性が感じられないのである。こういった特異な人物を主人公にするならば、軋轢を通じて社会や周囲の中で主人公が自らの立ち位置を定める過程を描くのが、この手の作品の最低限のマナーだと思うのだが、どうだろうか。同じくエリック・ロス脚本の『フォレスト・ガンプ』では、主人公のハンディキャップと周囲の現実的な反応と家族の愛がいい感じに噛み合っていて、単なるおとぎ話を超えたインパクトを受けたのだが、本作はどうも設定が上滑りしている感がある。
以上、物語についてはウ〜ンな部分が残るのだが、映像は最高に美しく、お金を払って映画館のスクリーンで観賞した甲斐があった。あと、夜の海戦シーンは大興奮だった。デヴィッド・フィンチャーの本分は戦争映画なのでは?次回は戦争モノ撮ってくれー
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (5 人) | [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。