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[コメント] 天使と悪魔(2009/米)

本作でもカトリックがネガティヴキャンペーンを張ってるとのことですが、これほどヴァチカンの魅力を伝えてる作品は今までなかったと思います。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 前作はキリスト教の根幹に当たるミステリーだと言うことで、話題は大きかったが、物語の出来は極めてありきたり。せいぜい主演がハンクスに代わっただけの『ナショナル・トレジャー』(2004)程度でしかない。今更言うのも何だが、最初から解けるように出来ているパズルを主人公がなぞって進んでいくだけの極めて単純な物語で、主人公の存在感もなかったし、単に金だけかけた駄作としか思えなかった。

 そんなこんなで一切期待もかけずに本作を観たわけだが、少なくとも、前作の悪い部分はかなり軽減されたのは確か。謎解きよりもスペクタクル性の方に話を持っていけたのは映画としては正解だし、何より本当の観光地でアクションしてる。という気分にさせられるのが良い。知的な探求をすると言うのなら、ヴァチカンはもってこいの場所。さらに制限時間を加えることで、アクションにも締りが出てる。少なくとも前作で失望を味わった身としては、思った以上の出来だったのは素直に嬉しく思う。演出にかけては本当に申し分ない出来だろう。

 ただ、一方では物語にいくつも変な部分があったのはいただけない。

 一番の問題はイルミナリティの放った刺客にまったく魅力がなかったこと。どんな困難な作戦も単独で全てこなすスーパーマンのごとき存在のため、イルミナリティの組織だった巨大さは感じられず、敵の存在がとても卑小に思えてしまったし(事実卑小なんだが、それを感じさせない組織力をはったりで出せば良かったんだ)、あれだけの任務を淡々とこなしてる能力があるくせに、最後があっけなさ過ぎ。あんなに人を信じてよくここまで生きてこれたもんだ。

 それと、ダン・ブラウンの作品だってのが丸分かりの脚本なのも問題。物語そのものは充分面白いとは思うのだが、ブラウンの作品に共通する点、つまり信用できるサポーターが実は黒幕という作品に共通するパターンがあらかじめ分かってしまってると、本作はまさしくその定式に則ってしまったため、途中で黒幕が誰か分かってしまう。「ブラウンだったらこうするはずだ」と思ってしまう私が悪いだけなんだろうけど、どんでん返しが待っているのならば、気持ち良く騙してほしいもんだ。

 充分に楽しめた作品ではあるが、詰めで楽しめなかった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Aさの[*] おーい粗茶[*]

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