コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] レスラー(2008/米=仏)

痛い映画だった。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この痛さは、見た目の痛さと内面の痛さが重なる感覚でした。本人は懸命に頑張っているけど、なかなか日常を迎合できずに過去のプライドやエゴに取りつかれて、結局身を滅ぼす典型として主人公が描かれます。これはまさに中年男の在り方として、かなりのシェアを握る存在と言えるのではないでしょうか?

私も今大変孤独で、家族と絶縁していたりします。まだ仕事をしていることができるので良いのですが、歳とともに将来の”老い”を意識するわけです。「今は良い」だけど「将来は」と聞かれると、自分はさておいて、自分以外の家族とか友人とか会社の同僚とか、いろいろな面で浮世離れしてゆくようで、どんどん落ち込みますね。今の不景気が重なって、とても暗い思いに陥ります。

この主人公は一見明るく振舞っていますが、実は大変孤独で、トレーラーハウスの家賃すら払えない元プロレスラーですね。仕方なくスーパーでバイトしながら週末は試合で格闘するわけですが、それも老いからの衰えで、思うように戦えません。そして遂に心臓マヒで入院。心臓のバイパス手術をして何とか絶命を免れますが、生活するために普通の生活をしようと努力します。

そんな彼に関係する二人の女性。一人は子連れのストリッパー。そしてもう一人はずっと音信不通の娘ですね。

心臓手術をしてレスラーをやめて、娘と仲直りしたい、ストリッパーとともに生活をしたいという願望を持ちますが、それも結局実現できずに、最後満身創痍の体で再びリングに上がります。そしてリング上からジャンプ!そんなエンディングでした。

ミッキー・ロークはしかし、実にこの役を見事に演じましたなぁ。

彼の代表作と言われている『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』が1986年の作品ですので、四半世紀経過しているわけです。すでに50代ですよ。歳が。その割には肉体は見事で、そりゃ若い方に比べれば衰えを感じますが、それにしてもマッチョぶりが素晴らしい。

プロレスシーンでも本人が演じていますからね。割れたガラスを体中にちりばめるなど、演出とはいえ痛々しい演技が素晴らしい。かつての若いころの演技とは全く異なる無骨で不器用な演技は見事でした。

「俺を引退させるのはファンだ」

と叫ぶラストは感動的ですが、その時見上げるとストリッパーのキャシディ(マリサ・トメイ)の姿が見えないんですよ。ここが悲しいですね。リングに上がるともう自分一人しかいない。そんな孤独が最後に倍増します。そしてブルース・スプリングスティーンのかなでるメロディ。

男ってのは所詮孤独なんですよ。いろいろ紆余曲折があったとしても幸せが続かない、そんな孤独であることの実感をひしひしと感じさせる物語でしたね。

お見事でした。

2010/02/10(自宅)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)3819695[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。