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[コメント] 愛を読むひと(2008/米=独)

何にしても思い込みはろくな結果を生まない。てっきり社会派ドラマの要素を持つメロドラマかと期待していたが、自分勝手な人々が交錯する単なるメロドラマであり、起こる事件はロマンスの調味料に過ぎなかった。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最初から最後まで、主人公達の身勝手な思い込みが理解を拒み続けるメロドラマであった。

ケイト・ウィンスレットの演技は成る程たいしたものであることは世評に違わない。しかしその行動が解せない。文盲である事で、おもちゃにしている少年に書籍を読ませて喜ぶのを謎と思わないデヴィッド・クロスも不可解なら、ナチの収容所看守であった行動に後々後悔して、自死するウィンスレットの享楽的行動も首をひねる。なおかつ文盲を抱えるウィンスレットを、その「恥ずかしさ」ゆえに真実を隠して救いもせず、後々牢獄の彼女にカセットを送って事たれりとしているクロスの気持ちもむかっ腹が立つ。

大体クロスはウィンスレットとのことを「ひと夏の過ち」と片付けるが、彼に親しく話しかけてくる友人、誘う女生徒たちを邪険に扱ってまで共にいる時間を求めた相手ではなかったのか。それでいてウィンスレットが命を絶ったとき、それを語る相手は恨み骨髄のユダヤ人女性であり、妻なきあとのまだあどけなさも残るわが娘なのだ。相手を間違えているとしか言いようがない。ユダヤ女性がウィンスレットに同情しないのは当たり前だし、娘に父親として罪を告白して何の意味があるのか。正直この主人公の理性を疑わされた一作であった。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)サイモン64[*] shiono[*]

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