[コメント] ウルトラミラクルラブストーリー(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
時々電車に乗っていると、不思議な会話をする人がいますね。先日も電車の中で、見知らぬ女性に声をかけて、メモを突き出し「それを読んでください」と語りかける純粋そうな人がいました。
私たちは彼(彼女)のことを、あまり近寄りがたい存在として敬遠しますが、こういう人たちにはそれぞれの理由があるんだと思います。
この物語がウルトラミラクルであることは、その愛情表現が極限に達することによって強いインパクトをもって表現されます。
それは、心臓が止まるほどの愛であり、農薬で身を包みこむほどの愛であり、クマに脳みそを投げつけるほどの愛であり、この表現手法が常識を逸脱している点が凄いと思いました。
常識ではかなわないほどの愛。それは主人公が出会う、好きになった女性がかつて付き合っていた男性との巡り合いでも示されます。その男性に顔はなく、胴体だけで動いています。そして主人公の青年との何気ない会話が人物像を浮き彫りにします。
かつて女性と付き合っていた男性は透明人間だった。でも、この常識を逸脱した主人公にはその姿が見えたわけなんですね。
このときのARATAさんの演技が実にいいんですね。顔は見せませんが、その仕草とかセリフの感じが自然でとてもいい。顔を出さない演技ってのも大変難しいと思いますが、この透明な人物の雰囲気をよく示していますね。
すごいなー、このインパクト。
この年に作られた多くの映画で、わたくしとしては、この映画に出演した松山ケンイチさんは間違いなく主演男優賞ものだったと思います。
彼の持つ狂気。そして周囲から危険に思われる人物。黙々と農業を営む青年。この人物の挑戦できる役者はそれほど多くないでしょう。この狂気に満ちた美しい青年と彼独特の愛情表現が素晴らしかった。
カメラはこの人物たちを長まわしで静かに追い続けます。この長まわしの手法は大変緊張感を高め、それぞれの演技を自然なものに風化させます。
それからこの映画を支えるのが言語。津軽弁が横行するこの言葉の嵐。だからこそこの映画は映画として成り立ち得たのではないでしょうか。(字幕がないと意味がわからないところが多いのですが・・・)
この監督の力量と主人公の松山ケイイチさんに万感の思いを込めて敬意を表したいと思います。
2010/01/20(自宅)
そういうえば、この類の映画では『フォレスト・ガンプ』や『ギルバート・グレイプ』も忘れられませんね。
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