難しくないんだけれど、ある意味、こういう哲学的映画（？）って最近はやってなかったのかなあ。それを若い人が作った、しかも女性監督である。僕にとっては無名の横浜聡子さんだけど、俄然うれしくなります。

映画って、一つの自分を表現する場所であるから、人に媚びる必要はないわけです。だって、みんなに分かられたいって、みんなに分かる絵画を書く絵学生なんかいまどきいないでしょう。映画って、ある意味ウンコのようなものなのです。排出物なんです。ですから匂いもあれば、自分そのものがモロ出てしまっている、、。

で、この映画に戻ります。男がいます。頭の中にヘリコプターが存在していて、農薬をまいています。これが男を悩まします。落ち着かないのです。何かしゃべっていないと不安です。でも、不思議と青森の近くの人たちは男を変人扱いしていません。人間扱いしています。ここをまず抑えておかないといけません。

この段階で、あ、いやだ、頭のおかしい人のハナシだ、きもいわあ、と思うとこの映画は皆目分からなくなります。

一方、事故で頭部が行方不明の彼氏（死亡している）がいた女が登場します。頭以外は健全な男は女に恋します。頭の中を駆け巡るヘリの農薬を体に実際散布してしまうと、頭も健全になってきます。女とも普通の会話が話せるようになります。

怖いですね。頭以外は健康を損なってきたら、要するに死に近くなってきたら好きな女と会話が出来、幸福になってきます。すると、男も頭の欠如している女のモトカレと道で遭遇します。靴をもらったりします。これで合成人間が完成します。

更に農薬をかぶる毎日を続けていくと男はついに死んでしまいます。しかし、心臓は停止しても、男は女と一緒に生活を続けられます。

（実に不思議なんですが、この映画には健康な男女の話なのにセックスの匂いが全くしません。頭の中、要するに脳の中のこと、の話なんです。でも、僕たちも毎日脳という司令塔のおかげで飯を食い、セックスをし、本を読んでいるわけです。映像では全く次元の違う話のようですが、僕たちの日常を写し取っている話でもあるんです。）

だけど一度死んだ男が本当に死んでしまうんです。熊に間違われて鉄砲で撃たれるんですが、これがちょっと僕には意味がはっきり分からない。ドラキュラ伯爵のように杭で打たれたら別ですが、、。でも、脳は保存してくれという遺言で、その脳はまた驚く使い方をされるわけですが、、。

作家映画ですね。何かまだプロットが目立つ作りで、映像的にもまだまだ稚拙なところも見えますが、映画を作るぞ、自分はこんなもやもやを頭の中に抱えています、ちょっとでも出していきたい、といった意気込みのようなものを感じます。映画の原点です。

でもこの映画、平日だったけれど、観客数４人。うーん、みんな、もっと映画を見ようよ。