を映像を通してわれわれは食するのだ。

結構前半は切れがいいね。冒頭、監視カメラを通してまるで喧嘩をしたかのような機嫌の悪そうな富裕層らしき夫婦が豪華ホテルに帰りつく。迎えるフロント。織田裕二と 天海祐希、登場である。

しかし、次第にこの二人が娘を誘拐された母親とイタリア着任早々の外交官だということが分かってくる。外見ではわからない人間の深部。面白い出だしだ。娯楽映画としては申し分ない滑り出しで、ニヤニヤしている自分を発見する。

さて映画は犯人からの要望で身代金を持ちながら次々とイタリア世界遺産各地を転々とするさまをスピーデーに描写する。映画館の椅子に座っていながら感じることの出来る旅の風味と文化。なかなかのサービス振りだ。バックはサラ・ブライトマン美声だ。この上ない贅沢。

しかし後半に入って残念なことに肝心のプロットで息切れがしてくる。監視カメラを謎の本流に見立てたところまでは秀逸だが、ミステリー的にはそこまで。

入院直前の女児誘拐をする理由がいくらなんでもデタラメ過ぎる。成功率が1％のものに冷静な犯罪集団が賭けるはずがない。また練って、練ってやっとゲットできた某大臣に彼らは何をしたかったのか。ぜーんぜんこちらもデタラメです。

要するにプロットの詳細は後回しに脚本を作ってしまったんだろうなあ。前半が面白かっただけに残念な後半の展開です。でも、まあ、この超暑い中、エアコンに当たりながら豪華絢爛なイタリア旅行を仮想体験できたのだから、まあいいかな、と優しい気持ちになる。

この手の映画に良くある有名俳優の出演料稼ぎ役どころには少々気になるものは残ったが（大塚寧々、伊藤淳史）、まあご愛嬌かな。

主演の織田裕二は役をストイックに作り上げ思ったより演技に対して目を見張るものがあった。（別にファンでもないですが、、。）　ええ、まあ、真夏の劇場で見る映画としては十分優秀な映画だと思います。ハイ。