コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] アマルフィ 女神の報酬(2009/日)

恐ろしいほど制約の多そうなこの企画を、どうにか「映画」のレベルまで持ち上げようと努力する、演出家の悪戦苦闘の痕跡に感動を禁じ得ない。運が良ければ西谷弘はかつての鈴木清順加藤泰のように、将来再評価されるであろう。
赤い戦車

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画研究塾というサイトの「アマルフィ」批評 ttp://movie.geocities.jp/dwgw1915/newpage158.html とほぼ被ってしまうのだが・・・

題名の意味は「ローマ」に無くて「アマルフィ」にのみ存在するものを考えれば良い。タイトルバックで流れている「波音」が暗示するように、それは「海」だ。そして「海」でのみ展開されているのは織田裕二天海祐希の「メロドラマ」である。だからこそ天海祐希との別れが「アマルフィ」の「海辺」で撮られなければいけなかったのだ。別れを撮るだけなら場所は「空港」でもよかった筈で、「アマルフィ」で撮られたからにはやはりその場所を選んだ必然性があったと考えるべきである。

また、織田裕二佐藤浩市を説得しようと試みる場面での「生きて償ってほしい」という台詞。凡庸な演出家ならこれを天海祐希本人に言わせようとするだろう。ここで西谷弘マイケル・マンの『パブリック・エネミーズ』ラストシーンと同じ「伝言」を採用しているのだ。それと序盤の暗転や時間軸入れ替えも意外性があっていい。意外性といえば、TV局制作の映画にありがちな、説明臭いアップやら台詞やらも極力排されている。例えば天海祐希が泣き崩れる場面から翌朝への唐突な繋ぎには感心する。刑事との格闘アクションもさりげなく本格派だ。

ともかく、本作は単なる観光映画として消費されるだけでなく、1カット1カット丹念に観ていっても何ら遜色ない出来だと断言しておく。無論弱点が無いわけではない。後半は間が持たず、正直息切れしている。しかし総じてよく健闘している。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。