[コメント] 南極料理人(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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こういう抑揚のない映画をテレビドラマではなくて映画館で映画として成立させることって、とてもセンスがいることだと思うんですね。個人的にはとてもよくできた映画だと思いました。
[笑える]
伊勢海老をエビフライにするエピソードは大笑いしました。ギャグですけど、みんな真剣にエビフライを希望して、それが失敗だったことに気づくんですけど、こういうトランス状態にある男同士の世界だと、こういう失敗はありがちな感じが致します。
節分で鬼に「般若」の仮面をかぶらせるシーンも大笑い。よく考えていますよね。原作にあったのかな・
[考えさせられる]
それは、から揚げのエピソードでふと考えることがありました。主人公の料理人が家で妻の作ったから揚げに文句を言います。そして南極でもあるきっかけで料理を作ることをボイコットしたとき、ほかの人が作ったから揚げが、妻が作ったから揚げと同じでまずい。その味をかみ締めて泣き出すシーンがありますね。とても映画的な素敵なシーンだと思います。
そしてラストの照り焼きバーガーのシーン。主人公は家族からやや見放された存在ですね。それでも1年以上北極に単身赴任して帰ったら、家庭料理でホロリ・・・が定石でしょう。しかし、家族と連れ立った遊園地であまり食べたくもないバーガーを口にして「うまい!」これで映画は終わります。
こういうセンスって、とても貴重です。
映画を知り尽くして、たとえば『是枝裕幸』監督のような全てを知り尽くしたうまさではなくて、センスとしてこういう表現が見事だな、と感心します。
映像も見事です、南極の広さを伝えるだけでなく、密室の孤独だとか、料理の手さばきだとかを実に軽妙かつ巧妙に捕らえていますね。
撮影監督は『芦沢明子』さん。
『黒沢清』監督の叫やトウキョウソナタなどが印象的でした。こういう映像表現のセンスも見逃せない1本だと思いました。
2010/03/27 自宅
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