決して嫌いなタイプの作品ではないだけに、文句をつけるのは心苦しいのだが、はっきりと小西は幼稚園児の母親には見えず、それは岸部の言う「子供の手をしている」というセリフの前触れには残念ながら見えない。彼女の演技が幼さを感じさせてやまないのだ。それは前文の如く不快さをもたらすものではなく、ファンにとっては嬉しい演出だろう。しかし、小西は表情の大人びた香りを演技で破壊しているようにも見える。

漫画的演出にも一長一短あって、小西のせいで話が必要以上にコミカルになり、現実感を欠いたのは惜しまれるところだ。「ととや」での岡田義徳との取っ組み合いの喧嘩などが代表的なシーンだろう。

しかし一方では、漫画的演技ならではの匂いをプラス方向に活かした例もあり、山口紗弥加の感情表現過多な演技がその代表格だろう。倍賞美津子の演技も小西のテンションに合わせているふうに見受けられるが、不快感はない。総じて男優の元気のなさを女優陣がカヴァーしている風もあり、監督の裏の采配が垣間見える。緒方明作品としてはコメディという意味でも一種の冒険であり、試行錯誤の末にこのような方法論に律せられた世界を構築したのだろう。最後まで見せる描写力は健在であるようだった。