嘘のように青い海が実際に海で撮られた画なのかやはり嘘の海なのかはこの際どうでもよく、その青さが唐突に見えてしまうという画的な流れを問題にしているのだ。終盤でようやく血の臭いが鼻孔に届いてきた気がする程度の、アクション、殺戮シーンに於ける肉体感の弱さも致命的。芦名星の禍々しい殺気と大後寿々花の溌剌とした純情、小林薫の地に足ついた泥臭い存在感などに救われるが、人様にお見せできるレベルとは到底言えない。どこからともなく、明確な殺意と共に飛んでくる手裏剣の接近感は、どこから誰に狙われているかも分からぬカムイの境遇を瞬間的なアクションで観客に実感させ得ていたと思うが、「猜疑心」という主題の扱いが雑なせいで終盤の展開にも情動を掻き立てられない。