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[コメント] アバター(2009/米)

続編があるなら、是非今度は地球側の視点で。「大佐〜〜〜!」
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 かつてキャメロンはSF映画ファンにとってはリスペクトの対象であり、この人の作る作品は外れがない。とも言われていた。何せ監督作品を列挙しても、「ターミネーター」、「エイリアン2」、「ターミネーター2」、「アビス」、「タイタニック」…これらは単独の映画としてだけではなく、数多くの亜流の映像が作られてきたかと思うだけでも、どれだけの影響をメディア界に与えてきたかは知れようというもの。キャメロンの作る映画こそがSF映画のフォーマットとなっていたのだ。

 だが、「タイタニック」でついにオスカーを取ってしまってからは映画作りのモチベーションが下がってしまったのか、以降は時折海洋もののドキュメンタリーを作るくらいで、後は製作ばかり。物語の世界から退いてしまっていた。そんなキャメロンが以来十数年の時を経て帰ってきた!これだけでも視聴する価値はあろうというものだ。しかも最新の3D技術をふんだんに使って。ということで。なんだかんだいっても期待度満点。

 しかし、待っていただけはあった。アクション作品としては、存分に楽しめる。というより、映画の中にここまで心地よく浸り込める映画はそうは多くない。良いものを観させてもらった。

 物語そのものはとても単純。80年代に盛んになっていた自然回帰を素直に描き、ストーリー展開も極めて単純。その代わり、盛り上げるべき部分には徹底して盛り上げるべくサービス心たっぷり。これこそSF映画の正しい作り方だ。そもそもアクションSFを観るのに期待しているのは、作り手の徹底したサービス心なのだから。

 そしてそのサービスを裏打ちする演出の凄さ!3D作品は別段好きって訳じゃないけど、この作品に関しては3Dだからこそ楽しめる部分が多数用いられていて、「ここまで来たか」という感慨を新たにさせてくれる。

 それと、随所に見せるキャメロンのこだわりも楽しい。かつて「エイリアン2」に出て、以降SF映画の定番となっていったパワーローダーは、ますます自然に、人間を怪物化させるアイテムとして登場。その凶悪ぶりをきっちり見せてくれるし(「エイリアン2」の時とは使われ方が逆ってのもおもしろい話だが)、「エイリアン2」、「ターミネーター2」に共通する妙にマッチョで気っぷのいい女性もきっちり登場。「アビス」を思わせるファーストコンタクトシーン。これらは散々他の映画にも使われてきたが、本家がフェティッシュなこだわりを持って作れば、これほど楽しくなるのか!というくらいに楽しい。「ああ、キャメロンだなあ」という思いを持って観ることが出来ることも、なんか幸せな気分にさせてくれる。

 物語は単純にいきすぎる嫌いはあるものの、随所にちりばめられた伏線がきっちり回収されているあたり、映画として相当練度が高いことも思わせてくれるし、敢えて単純化することでサービスが詰まってる。いくつか謎も残っているものの、これはおそらく最初から続編を想定しての作りだろうから、これはこれで良し。

 そして本作で一番の売りである演出に関しては、「見事」の一言。最初から3Dにこだわりを持って作られているだけあって、3Dとの相性は最高で、臨場感も、美しい景色もすべて自然に映画の中できっちり機能してる。最近はCGの質も上がってきたが、それを発揮するのは映画よりもゲームの方で、今は映画よりもゲームの位置シーンの方が綺麗だ。なんてこともざらにあるものだが、少なくともこの作品レベルにまで達したものは今のところ存在しないし、ストーリーの一環としてビジュアルがあることをはっきり示しているので、これだけのブランクがありながら、ここまできっちり映画が作れるとは思ってなかった。

 キャラについても上手い配役だった。『ターミネーター4』でハイブリッドを演じたワーシントンは、見た目はごつく、目が優しいという、本作の主人公にはぴったりの役柄。下手に自己主張が強くないのも良い。まさに適材適所。グレイス演じたウィーヴァーは『エイリアン2』での盟友だが、これまた見事な配役…存在そのものよりも、この人はあんまりにも背が高いので、ブレイクするまでに時間がかかったと言う過去を持つのだが(何せ身長180センチを超えてる)、それがお姫様だっこされるシーンがあるなんて、まるでウィーヴァー本人に対するサービスみたいだ。でも、本作で特筆すべきはガチガチの軍人“大佐”を演じたラングの存在感だろう。今や時代遅れの完があるマッチョ感丸出しのキャラは、ネタよりも素直に格好良く見えてしまうこう言う好敵手がいてこそ、戦いは面白くなるのだ(何でもラングは『エイリアン2』では選考に落とされたが、キャメロンがそれを覚えていての起用だったのだとか)。

 …大佐で考えたのだが、もしこの視点を変えて、地球から観たら、なかなか面白くなりそう。地球人側からすれば、ジェイクは異星人と結託して地球に必要な物質を独り占めにし、更に武力で地球人を圧倒して追い払ってしまった訳だから。この視点でもこの作品は作り得るな。視点の変化を考えると面白い。

(評価:★4)

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