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[コメント] ゴールデンスランバー(2010/日)

理屈じゃないんだよ、人を信じるってことは。
freetree

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







…とは、エスパー魔美の高畑くんのセリフであるが、まさにそんな感じ。

様々な事件が起き、マスコミその他による印象(イメージ)操作が当たり前のように行われている昨今において、何が本当かを見極めることは難しくなっている。しかしだからこそ、疑うこと、自分で考えること、そして信じることが大切なのだと思う。

もちろん現実は、青柳の周りのように"いいヤツ"ばかりではない。信じても裏切られることは、当然あるだろう。それでも人を信じたい、という作者の思いが本作には込められているように感じた。

原作は未読だが、これまでの伊坂作品と比べて、終盤で全てが収束するといった感じではなく、どちらかといえば映画的見せ場のつなぎ合わせといった印象があるが、下手に主人公が大活躍して陰謀を解き明かしたりせず、生きているだけで勝ち、としたのは非常に伊坂らしい。

むろん、暗殺の首謀者はほくそ笑んでいるだろうし、問題は解決していないのだが、特に力もない一市民ができるかぎりのことをして、そして生き延びた。両親にはそれを伝えることも出来た。顔は変わってしまったが、それでも気づいてくれる人はいた。それだけで「たいへんよくできました」をあげていいと、自分は思う。

…で、映画自体にも5点を付けたわけだが、気になったところがなかったわけではない。

・首相暗殺のシーンの特効が安っぽい ・キルオ(濱田岳)の出現が映画的…悪く言えばご都合主義 ・小鳩沢(永島敏行)が漫画的…特に花火で吹っ飛ばされるシーン ・竜雷太香川照之に「本物の青柳だったか?」と聞くシーン、必要か? ・iPodで銃弾が…のシーン。使ってるものは最新だが、超古典的

とまあ、いろいろあるが『アヒルと鴨』『フィッシュストーリー』ときて、集大成と言ってもいいのではなかろうか。伊東四朗のシーンは久々に劇場で涙してしまったし。…それはともかく、こんな時代において、こういったある種、性善説的な作品が(少なくとも原作は)支持されているという点で、まだまだ人間も捨てたもんじゃないなと思った次第であります。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)代参の男[*] ぽんしゅう[*]

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