[コメント] ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(2009/スウェーデン=デンマーク=独)
原作ファンを裏切らない作りだが、それを凌駕する挑戦がない。キャストは老け、語り口は地味。小説のケレン味ある娯楽性が、中庸のダイジェストになってしまった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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とはいえ、はなから過度に期待していなかったことも事実。私はこの正月休み(2010年)に原作を一気読みして、骨の髄まで堪能したから、リスベットやミカエルにもう一度会いたいという気持ちで劇場に足を運んだ。その気持ちは踏みにじられることはなかった。
だが語りの饒舌さがない。例えば序盤、ミカエルがヘンリックの依頼を承諾するその心理が描かれていない。彼は物語の視点人物だから、ヴォイスオーバーで心象を語っても構わない。また、リスベットが、調査終了後もミカエルに興味を抱き続ける気持ちもよくわからない。ハッカー仲間のプレイグを相手に語ってもいいのだ。
つまりは、モノローグやダイアローグを人物描写の道具として機能的に使いこなせていないということだ。登場人物の行動に伴った思考の描写が欠落しているから、シーンからシーンへの転換がぶつ切りに感じられる。なぜこうなるのか。人物の感情を伝えるのも演出の役割だが、この作品には、観客は原作を読んでいるはずだという予断がある。あるいは、所詮映画は原作を越えるものではない、という諦めか。だからファンを裏切らないということが最優先事項となる。
まぁ、それでもよい。それでも私は「ミレニアム」の世界にまた足を踏み入れたいし、続編も見に行く。ただし、ハリウッドリメイクの噂、こちらにはまた別の期待がある。原作の娯楽性と大衆性は、ハリウッドの資本と人的資産にこそ相応しいのではないかと思うからだ。
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