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[コメント] 逃亡者(1947/米)

これは何という事もない全く普通の物語ではないか。というと巨匠フォードには申し訳ないのだが。
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







‘聖者の受難’、いや‘受難によって聖者になった司祭’の話だ。普通の真面目な司祭(ヘンリー・フォンダ)が困難に面して、‘神の力’を得るというか‘神の愛に目覚めて勇気’を得て聖者になるという物語だ。

がその‘変身’のシーンの説得力が、無い。

演ずるのがフォンダなので、最初から成人のようなのだ。そんな彼が‘変身’して聖者になっても、誰も驚かない。

もっと気弱な、ダメ男が変身すると、見応えがあったかもしれない。ミス・キャストいうか、演出の下手さか。もっともそんな男が司祭によくなれたな、という疑問は残る。

そこで、原作をチェックしてみた。「序文」に映画化について触れている文章がある。「それまで見た事もないほどの信心深い映画」と皮肉たっぷりに言い、更に「(映画は)司祭のほうに誠実さのすべてを与え、警部のほうに堕落を与えた」(早川書房、グレアム・グリーン全集8「権力と栄光」斎藤数衛訳) つまり主人公と副主人公のキャラを変えて、原作のテーマも歪めてしまった、と痛烈に非難しているのだ。

原作主人公のキャラは、ネタバレになるので遠慮するが、映画のように中途半端なものではない、原作と映画では歴然とした差がある→はるかに原作の方が物語にマッチして説得力がある。

あと撮影はガブリエル・フィゲロアだが、「真珠('47)」以上に素晴しい。‘連なる柱の長い道’も印象に残るが、光と影、特に光!が、グレアム・グリーンではないが「それまで見た事もないほどの」出来栄えだ。3.5点

(評価:★3)

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