[コメント] 恋するベーカリー(2009/米)
冒頭近くにストリープがベイカリーで見せるバックショットの佇まいが全て。
別れた夫婦同士が互いの心の隙間を埋めあえる相手として互いを見つめ直すという物語自体は他愛もないものだし、主役の2人以外の登場人物の描かれ方には深みも何もあったものではないが、それでも全篇通して楽しく見られるのは、恥ずかしげもなくどころか、愛し合う者同士なら当然とばかりに裸体をさらけ出し合いつつも、そこを決していやらしく見せないストリープ(変わらぬ繊細な演技)、ボールドウィン(想像以上の存在感)、そしてメイヤーズ監督の三位一体とも言うべき絶妙のバランス感覚が成せるまさに熟練の技によるところが大きく、自分などは80年代に観たニール・サイモンやハーバート・ロスなどといった面々の作品の風情に近いものを感じ取り、何だかとても嬉しくもあった。
とにかくこの映画は、冒頭近くにストリープがベイカリーで見せるバックショットの佇まいが全てであろう。その堂々たる体系のさらしっぷりに本気を感じ「オッ」と身を乗り出すか「何だこりゃ」とばかりに引いてしまうか、そこでもう全てが決まってしまうような、思いきって言うならそんな映画。
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