[コメント] バッド・ルーテナント(2009/米)
マクドノー警部補(ニコラス・ケイジ)は、実に制服の似合わない男である。つまりは、どうにもカタチの定まらない男なのだ。器用なのか不器用なのか、ドラッグに酔っているかいないのか、その言動は常に曖昧だ。しかも、律儀さと甘さが共存する魅力的な曖昧さだ。
痛めた腰をかばうように少しかしげた体勢。型くずれした野暮なスーツ。無造作に腹のベルトにはさまれたマグナム44。職務に対する律儀さと、人生に対する甘さが、そのままべっとりとまとわり付いているようなマクドノー警部補(ニコラス・ケイジ)の造形が素晴しい。
気負いも、気どりもなく、しかも快楽に忠実で(つまり弱く)、それでも悪びれることもない。行き当たりばったりで曖昧な生き方に、いつしか埋もれてしまった正義感が、ときおりこれ見よがしに垣間見えたりするのだ。何と正直で、憎めないふしだらなキャラクターだろう。ニューオリンズの『ダーティー・ハリー』(クリント・イースト・ウッド)として、ぜひともシリーズ化して欲しい「今」を感じさせるバッド・ヒーローである。
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