[コメント] 運命のボタン(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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トロッコ問題とは、有名な倫理学の思考実験の一つで、つまりはこういう話しである。暴走するトロッコが進む先に5人の人が線路にくくりつけられています。このまま何もしなければトロッコは5人を轢き殺します。トロッコには1人の人が乗っています。あなたはこのトロッコを爆破するボタンを握っています。一人を爆殺して五人を助けますかどうしますか?(多数のバリエーションあり。この爆殺もバリエーションのひとつ。)この思考実験は「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」を問うものなのだが、どういうわけかアメリカさんは、この問いが大好きなのである。かの『ダークナイト』でもジョーカーがバットマンにこの問題を投げかけるシーンが登場する。日本でも一時期はやったマイケル・サンデルのハーバード白熱授業「正義論」の第一回の講義もこの「トロッコ問題」だったはず(http://www.youtube.com/watch?v=kBdfcR-8hEY&feature=PlayList&p=30C13C91CFFEFEA6&playnext_from=PL&index=0&playnext=1&cc_load_policy=1)。
この問題は悪趣味である。どんなにバリエーションの設定を工夫したところで、どんなに映画的に工夫を凝らしたところで、トロッコ問題を真剣に考えることは悪趣味である、と私は思う。悪趣味に人をつきあわせるな。
むしろ、なぜ現代アメリカ人は執拗にトロッコ問題を考えてしまうのか。またそれがポピュラリティを獲得するのか、についての考察を映画化して欲しかった(まあ、それだけゼロサムゲームでの競争社会がのっぴきならないところまできているってことなんだろうけど、映画の役目は、そこからのジャックアウトの可能性を示すことにこそあると思う)。ということで★2。前半の映画的な撮り方は結構好きなので★1つおまけの点数です。俺は押さんけどね。
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