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[コメント] 必死剣 鳥刺し(2010/日)

伝統の力。エンターティメントから逸脱しないメッセージ性はやや残念だが、役者、映画的完成度において群を抜いている。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 原作未読だが、側室を殺めるところから始まる構成が見事。冒頭の能の所作も美しい。若い時わからなかった古典芸能のすごさを感じた。それがそのまま連子に脂下がっている殿の描写につながる。開始5分で客をつかむ作品。名作のセオリー通りの展開である。

 対話する顔の表情を見せて自然の風景のカットが入る。そこに約束事の音楽。すべて時代劇の映画的常套だがそれが心地よい。池脇千鶴の里尾との交情も型通りの展開だが説得力は強い。演技の賜物であろう。豊川悦司はいうまでもなく、別家の吉川晃司、中老津田の岸田一徳、いずれも存在感のある名演。

 連子になぜ殿がそれほど入れ込むのか、里尾が夕立に洗濯物を取り込むシーンが不自然。やはり風に流れる雲、不意に薄暗くなる空、不安そうに見上げる里尾の顔のショットに大粒の雨、とやってほしい。いきなりシャワーのように降られては興ざめである。つまらない指摘だが他が一部の水も漏らさぬシーンの連続なので、残念だった。

 藤沢周平原作物では、山田洋次の『隠し剣 鬼の爪』『武士の一分』より面白かった。平山秀幸、天晴れである。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)IN4MATION[*] 水那岐[*]

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