[コメント] ガールフレンド・エクスペリエンス(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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所は文化、経済の中心地ニューヨーク。所得多きビジネスマンは高級エスコート嬢を得て日夜仕事に励む。男たちと接するチェルシーもある意味すべて男たちと対等だ。へりくだることなく報酬は受けるが、ただ悩みを聞いてあげるだけの女の子ではない。セックスも食事も、ビジネス会話もお金ですべてを解決しようとするニューヨーカーたちの欲望を知り抜いての成果に対しての報酬である。
とてつもなくクールで美貌のサーシャ・グレイ。もう見ているだけで醒めたビューティを感じさせる。そこらの映画女優にはいない種類の超美人である。まさにアドリブ的なセリフの多い画面展開。今流行りの時間軸の多様さ。そして緻密なデジタル映像カメラで撮ったピカ一のニューヨーク光景。もう見ているだけで耽溺している自分を感じる。
意外や、この、現代でも実験作と見えてしまう映像処理は、1960年時代後半ではヨーローッパで多用された技術でさえある。例えばアンナ・カリーナをただカメラで追いかけ回して撮っていたゴダールを思い出してしまう。あの、ドキュメンタリー手法である。
ただ、ゴダールと違ってソダーバーグは生身の人間に拘っていない気がする。この超セクシー女優にしてセクシーさから, うんと遠ざけている。彼女もそれを楽しんでいるところがある。すなわちこの映画からはセックスの匂いがしない、むしろセックスを欠落させている。そういうシーン自体ない。そこから浮かんでくるのは、現代ニューヨーカーたちの殺獏とした漂流光景だけである。
金を得る女と金を放出する男。それは現代においてはセックスではなく、むしろビジネスの一形態に他ならなくなっている。そんな、虚無感まで感じられるソダーバーグの新作である。僕はなかなか面白く拝見しました。
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