コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ガールフレンド・エクスペリエンス(2009/米)

トラフィック』以外、僕と相性の悪いソダーバーグの新作。さて今度はどんな作品を、と思っていたら何と40年ほど前に時間を遡ったかのような懐かしきアート映画であった。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







所は文化、経済の中心地ニューヨーク。所得多きビジネスマンは高級エスコート嬢を得て日夜仕事に励む。男たちと接するチェルシーもある意味すべて男たちと対等だ。へりくだることなく報酬は受けるが、ただ悩みを聞いてあげるだけの女の子ではない。セックスも食事も、ビジネス会話もお金ですべてを解決しようとするニューヨーカーたちの欲望を知り抜いての成果に対しての報酬である。

とてつもなくクールで美貌のサーシャ・グレイ。もう見ているだけで醒めたビューティを感じさせる。そこらの映画女優にはいない種類の超美人である。まさにアドリブ的なセリフの多い画面展開。今流行りの時間軸の多様さ。そして緻密なデジタル映像カメラで撮ったピカ一のニューヨーク光景。もう見ているだけで耽溺している自分を感じる。

意外や、この、現代でも実験作と見えてしまう映像処理は、1960年時代後半ではヨーローッパで多用された技術でさえある。例えばアンナ・カリーナをただカメラで追いかけ回して撮っていたゴダールを思い出してしまう。あの、ドキュメンタリー手法である。

ただ、ゴダールと違ってソダーバーグは生身の人間に拘っていない気がする。この超セクシー女優にしてセクシーさから, うんと遠ざけている。彼女もそれを楽しんでいるところがある。すなわちこの映画からはセックスの匂いがしない、むしろセックスを欠落させている。そういうシーン自体ない。そこから浮かんでくるのは、現代ニューヨーカーたちの殺獏とした漂流光景だけである。

金を得る女と金を放出する男。それは現代においてはセックスではなく、むしろビジネスの一形態に他ならなくなっている。そんな、虚無感まで感じられるソダーバーグの新作である。僕はなかなか面白く拝見しました。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。