[コメント] 闇の列車、光の旅(2009/メキシコ=米)
せめて人としてのぬくもりを、とふと決断したがため、まさに本当に明日が消滅してしまった青年。国外逃避列車の屋根にいようが、行き場所もなく、ましてや居場所もなく、いつかは殺される我が身。今は揺れる列車にただじっと佇むしかない。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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生きるということは本当に耐えがたいことだ。生活するには悪の道を選ぶしかない貧民層に生まれた青年。それでも生きてはいける。人として、なんてふざけたことを考えずに、ただ食べて、悪事にふけり、組織に守られ、ただ生きてさえいればいいのだ、と思っていた。
そんな青年が人を愛するという大切な時間を持つことになってしまった。人を愛するということは最低限、相手を守るということだ。しかし彼は組織に従ったため愛する人さえ守ることができず、人間として失格の烙印を自分に背負わせることになる。
だから、ボスが自分の目の前で愛する人にしたことを許せず、思わず関係のない女を守ってしまう。彼が初めて人間に目覚めたときだ。人間になった瞬間だ。けれど彼にはもはや生きることは許されない酷な日常が待っているだけだった。
この作品を見て思う。生きるだけであったら、彼はただ普通にその他大勢のように悪の道を辿っていれば出来たのだ。しかし、人として最低限のことを知ってしまった彼は人として生きることを決意してしまうのだ。その心情が哀しい。痛い映画だ。秀作。
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