[コメント] おかあさん(1952/日)
これは、成瀬の中でも、一二を争う凝った繋ぎの映画だろう。まずは、香川京子が今川焼きの露店で岡田英次と本を読む場面。「今川焼き」の幟(のぼり)が、「アイスキャンディー」に変わって、冬(春?)から夏に、季節をジャンプするのだ。
あるいは、香川の兄、片山明彦が療養所から逃げ帰って来てからの、あっという間の場面展開。同じように父親、三島雅夫の退場の簡潔さも驚く。しかし、誰もが一番びっくりさせられるのは、詳述は避けるが、皆で映画館で、映画を見ている場面だろう。これらは、狙って、観客にひっかかりを残そうとするカッティングだが、そういうアイキャッチを狙っていない、例えば、向ヶ丘遊園地のシーンの、ディゾルブでの繋ぎも素晴らしい。
そして、幼馴染の二人、香川と岡田の恋の行方を描いた映画でもあり、岡田の母親、本間文子から「お嫁さんになるならうちへ来てもらわなくちゃ。」と云われた後の、襖の陰に隠れる香川が、めちゃ可愛い。
ラストシーンは、タイトルロール、母親の田中絹代が、てっちゃん(田中の甥)と相撲を取るシーンで、一見、これからも力強く生きていく家族を象徴しているかのようだが、よく見ると、田中はとても疲れた表情をしている。これって、『シェーン』のようなバッド・エンディングではないのか。
#備忘でその他の脇役等について記述。
・田中絹代の妹、てっちゃんの母親は中北千枝子。髪結いの勉強をしている。
・岡田英次の父親は中村是好。
・捕虜のおじさん−加東大介。クリーニング店を手伝ってくれる。田中が加東からアイロンを教わるシーン。加東、上手い。
・三島雅夫の弟夫婦(香川の叔父叔母)は鳥羽陽之助と一の宮あつ子。
・露店で小間物を売る沢村貞子。リボンやボールをくれる。
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