[コメント] ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実(1974/米)
立場やインタヴュー時期の如何を問わず、登場する人々の発言があまりに率直であることに驚く。彼らは決して「嘘」をつかない。「東洋人の命の値段は安い。人口が多いからね。彼らにとって命は重要じゃないんだ」なんて言葉が悪びれた様子もなく口にされてしまう。カメラはそれを撮る。マイクはそれを録る。
中途半端な作りであるという評を完全に否定することは難しいかもしれない。論理や時系列に則った構造ではないし、感情的な主張がヒステリックに押し出されているのでもない。これ一作を見ればベトナム戦争の全体像を把握できるといったほどの俯瞰性は徹底されず、前線の兵士や民間人に密着したミクロ的視点にことさら重きが置かれているとも見えない。抽象的な云い方になってしまうが、監督は透明な映像とその配列を目指しているように見受けられる。それはおそらく彼が映画の力を信じつつも過信はしていないからだ。つまりは観客を信じつつも過信しないということと同義だけれども、最も重要なのは撮る/録ることすなわち「記録する」ことであるという立場だろう。
ピーター・デイヴィスは記録した。私たちはそれを見た。後は、私たちの問題である。
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