[コメント] 日本の悲劇(1953/日)
元祖松竹ヌーヴェルヴァーグ。ざらついた撮影、ワンシーン・ワンカットの連発、唐突な回想、音声のカットなど、実に斬新。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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望月優子と田浦正巳がやりあう墓所は、長回しの横移動によって貧層な路地裏に繋がる驚きがあるし、望月と佐田啓二(あんなに歌が上手いとは知らなかった)が小高い丘から見下ろす町の夜景は正に昭和の風景だ。この映画、番傘といい街灯といい、夜の明かりがとても美しい。
そして何より、桂木洋子が一瞬みせる嘲笑が忘れ難い。シニカルな人生を送る者は何時の時代でもいる。しかし本作は、それが時代によって培われたものだと正しく記録している。現代のシニカルな人生は多分、個別バラバラな動機によるのだろう。それは別の誰かが記録すべきことだ。
本家松竹ヌーヴェルヴァーグとの差異は、朝鮮人や政治犯が登場しないことなのだろう。これは大きな違いで、内向きの視線は木下の限界に違いないのだが、映画の形式としては本作、『愛と希望の街』や『少年』と並べても遜色ない。いかにメロドラマを導入するか、大島は影響を受けていると思う。
桂木と上原謙の会話のすれ違い具合は巧みな脚本の教科書のよう。上原謙、高杉早苗のバカ夫婦振りは秀逸で娘までも奇矯、ここまでくると笑わずにいられない。望月優子は主演にして狂言回しを兼ねており、周辺人物の不幸を呼び寄せている。こういう女性っているなあ。なお、三品取引とは綿の相場のことらしい。
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