[コメント] バーレスク(2010/米)
とにもかくにもクリスティーナ・アギレラの映画である。スター映画というよりもアイドル映画に近いアプローチ。三十路に届いた一線級のアーティストが演じるには、あまりにも残念な一幕だった。物語は主人公であるアギレラのサクセスストーリーであるが、アメリカの片田舎から都会へとやってきて、ステージの華を夢見るなんて芸当はおおよそティーンが望む夢物語であろう。そんな夢物語を三十路のアギレラが、しわがれたこれまた存在感のあるシャウトとともに、これでもかとそのパフォーマンスを畳み掛けてくるからトゥーマッチ。画面からは“女の生命力”と呼べば聞こえはいいが、なかんずく暴力に近い押しの強さが、この映画、ひいてはスター歌手アギラのマイナスプロモーションとなってしまった。ドラマの不味さは残念なことに、本来は主人公アギレラを輝かせるはずだったその人物造形の浅はかさにある。ヒロイン(アギレラだけに観客はその秘めたる力をあらかじめ知っている)には終ぞ何の葛藤もないのだから。せいぜい物語の動力となっているのは田舎娘という設定くらいのものであろう。都会に出てきてからというもの、 アギレラはトントン拍子と、または半ば強引にステージを侵略しはじめる。その姿に、彼女のドラマ上の欲求はステージのセンターに君臨することなのであるから、その様子ははじめから迷うことなき上昇モンスターのそれであった。同時にその上り調子と合わせて、ドラマ上用意されたイイ男を食ってしまうのだから目も当てられない。しかし、アギレラはこんなに華奢でエロティックだったろうか?(下半身は脆弱だが)顔は映画中に外科的に飛躍を遂げているようにも見える。何をアギレラを本作に駆り立てたか?シンプルな、レディ・ガガへの対抗心か?セックス・シンボルへとわが身を称揚させんとする自己陶酔的な酔狂からか?男根オーディエンスが映画内時間にとらわれる時、そこには妖艶な色香をふりまく悪女の姿をそこに見ろう。終わって一息つけば何も残らなかった。ただただアギレラの異常なほど肌がキレイなこと。
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