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[コメント] 人生万歳!(2009/米)

人生がばら色だなんて幻想でしかない。幸せになることも消極的な要素ばかり。それでも生きてゆく。(2012/05/03)
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ウディ・アレン作品はいよいよ排他的になってきた。

それは、かの哲学者シューペンハウアーが、幸せになることは孤独になること、と語った一文に一致する。

これはどの多くの映画監督であれ芸術家であれ、自ら生み出す仕事を続ける者の苦悩と現実なのであろう。

この映画が大衆向けでないことは明らかだ。

しかも、監督自らがインタビューで答えているとおり、彼の作品はいかにも心理学的である。しかも哲学的要素も高い。

それを、

「笑い」

という文脈だけで解釈しようとすると失敗する。

かれの内なる哲学は人間洞察であり、辛らつな社会批判にもつながっているのだ。

このことを理解する者は、主人公が二度自殺するシーンを笑えないだろう。

それでもウディ・アレンはコメディとしてのカテゴリーを譲らないし揺るがさない。それが彼のメソッドだからだ。

コメディというカテゴリーで現代社会をバッサリと切り落とそうとする姿勢はすでに若いころから用意されている。

しかしながら彼の晩年に差し掛かったころからの作品には「死」が見え隠れする。

その象徴が『マッチポント』であり『カサンドラドリーム』であろう。

本作品は地元ニューヨークに舞い戻ったウディ・アレンが試みた新たなニューヨークでありながら、表現手法(メソッド)は変わらず、しかも求める哲学も変わらない。

変わったことというと、より一層孤独になったということだろうか?

男性の描き方と女性の描き方を思い切り変化させて、男はみじめだ、といわんとする姿勢に共感する。

女性の求める性と男性の求めるそれは明らかに違う。

ここに出てくる男女はもしかしたら本能的な立場でいうと男女ふぁ真逆なのではないかと思わせる。

一夫多妻の逆だ。

それが現代の男女逆転に秘密なんだろう。

そんな辛らつさが随所に散りばめられた秀作である。

(評価:★4)

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