[コメント] シチリア!シチリア!(2009/伊=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
第二次大戦前から、おそらくは現代に至るまでの物語なだけに、断片的なエピソードをつなぐ形式になっているが、そのどれもに、一つ一つの優れた短編映画のような完成度の高さがある。
「起承転結」にそった骨格があり、画的な面白さがあり、「これぞ映画だ」というワクワクする楽しさがあった。例えば、恋人が親の決めた婚約者と歩いている時に道の両側ですれ違うシーンなど本当にうまいと思った。そしてこれらのエピソードで描かれたシチリアへのあたたかい思い。
本作はジュゼッペ・トルナトーレ監督の父親の人生を投影していると言われ、舞台となっているシチリアの町「バーリア」は監督の故郷だそうな。そういう思い出を、映画的な楽しさにあふれたエピソードで描いて、じーんとさせて終わり、と思ったら最後にとんでもないラストシーンが現れた。
現代のシチリアの街中を走り抜ける少年のシーン。そのシーンを見ながら私には、「あのあたたかくて、懐かしいシチリアの町はどこへ行ってしまったんだ」というトルナトーレ監督の嘆きの声が聞こえたような気がした。
悪く言えば、懐古趣味的などほどにひたすら、「昔は良かった、今のシチリアは嫌だ」と言っているようにさえ見えた。
思えばエピソードの一つに、盲目の議員がシチリアの都市計画を担当していて、図面を「見ながら」賄賂と思しき金をポケットに納めるものがあった。
このエピソードはもしかして、シチリアを今のような街並に変えてしまった者たちに対する、怒りを込めた皮肉だったのだろうか?「お前たちの目は見えているのか」という・・・
そう思ってみると、レモン畑の鬼のような番人「毛むくじゃら」が死んだエピソードで、「良い悪いは簡単にはわからない」と父が息子に諭すシーンもなんだか複雑な味わいに思えてしまう。
この意味で、映画全体を大きく左右するラストシーンとも言えるし、その意外性も映画らしいといえば映画らしいと言える。
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