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[コメント] 完全なる報復(2009/米)

「よくこんな酷いお話を思いつくよな。しかも映画にしちゃうとか」という慄きは『羊たちの沈黙』や『セブン』を初めて見たときのそれに近い(ちょっと大袈裟)。中盤以降はいよいよ荒唐無稽の度を深めてゆくが、それは観客を追い詰めすぎないための配慮、カート・ウィマーらしい品質管理だとも云える。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







開巻からジェラルド・バトラー一家が強盗に襲われるまで、わずか二分足らずほどだろうか。たったそれだけの時間の中に繰り広げられるバトラーと幼い娘の会話、そして画面外から聞こえてくる妻の声で「理想的に幸福な家庭」像を成立させきってしまう手際のよさに、選び抜かれた台詞と確実な演出力を確認することができる。また、バトラーの凶行によってもたらされる絶望感が最大値に達したのはおそらく駐車場での連続爆殺シーンだろうが、それは何のためか。自動車に閉じ込められたレスリー・ビブの「涙のない泣き顔」である。その一瞬を切り取ってみせることが演出だ。

バトラーの計画はとても緻密なものであるはずなのだが、映画自体は突飛なアイデア頼みで展開して大味な印象を与える。そのアイデアにしても「ネタ」とでも云い換えたほうが腑に落ちるような類のものだろう。それでもこの映画にはいくつかのよいシーンがある。よいシーンはよい演出に支えられている。

(評価:★4)

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