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[コメント] 冷たい熱帯魚(2010/日)

うーん、こういうカルト的スプラッター映画はホント久しぶり。あっという間の2時間半。
セント

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







でも、解体シーンも3回目辺りは馴らされて来て園子温のブラックに十分嵌まっていることに気づく。

この映画は悪という概念を突き抜けてまさに人間の本来の闇を見せつける。日ごろそんなのは狂気の人間の為せる技よ、と言いつつ、自分がすぐその悪に慣れ親しんでいることに気づく人間の弱さよ。そう、実は人間こそが一番残酷で、一番獰猛で、一番イカレテイル動物なのだ、と、、。

だからこそ、人間は神を生じさせたのではなかったか、と帰りの打ちひしがれた観客の様相を見て想う。

もう、この映画に出演した俳優たちの並大抵ではない演技を超えた演技は筆舌に尽くし難いが、これこそ狂気の渦に入った現場でこそ生み出されたものだろう。その集中心は演出を始めスタッフがすべて一つに交わり、ぐつぐつ煮つめ生じせしめたのだと思う。

この映画のすごさは、見た人にしか分からない。それほどド迫力がありすぎる映画だが、それでも粗が結構あり、それが終わってから気になりました。

まず、村田が何故社本を必要としたのが結局僕には分からなかったこと。明らかに社本は要するにヒッチコック風捲き込まれ型だから、村田の意思が必要ではないのか。外国であれば性的なものが介入するのであるが、、。

次は死体処理場となる教会の設定である。3度目の解体場面ではキリスト像が引き下ろされていて、しかしまた再度高く掲げられていた。これに映画的意味はあるのか?

次に、警察の存在があまりに軽すぎることでしょうか。途中の無謀な追跡シーンは置いといても、ラストのあの不存在はいかにもこの作品の価値を左右過ぎるぐらいの投げ方だと思います。何故警察が妻、娘を連れてきたのかも皆目分からず意味不明が残る。

投げたと言えば、社本が最後フツウに自殺するのがやはり解せない。これじゃ最後にこの映画を投げたと言っても仕方がないのではないか。あそこは、狂人になっても生かさせようよ、、。この作品のラストの求心力が失ってしまうような気がする。

でも、今これを書いていて、あの、村田の妻が人を愛してしまっていることに気づくシーンはやはり怖いよね。これは園子音が意図したものかどうかは分からないほどの黒沢あすかの怪演ぶりだったが、 この映画では、あってはいけない愛の情念ではないだろうか、、。そうこの映画では愛は余計だ。

この、愛のドロドロシーンは超昔に見た『女殺し油地獄』を連想しちゃいました。確か10歳ぐらいでこの映画を見た僕は、それから不幸な人生を送っているのです。

まあ、いいも悪いも後々印象に残る映画でしょう。でも、この映画をやり遂げた園子音には多いに拍手を送りたい。そんな明るい映画でもあります。

(評価:★4)

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