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[コメント] トゥルー・グリット(2010/米)

コーエン兄弟はなぜこの映画を撮ったのだろう?(2011/10/15)
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







勇気ある追跡

懐かしいですね。ジョン・ウェイン主演の大作でした。それをこの作品ではジェフ・ブリッジスが演じていますね。『クレイジー・ハート』でアカデミー賞を受賞。

この二人の対比は意味がありませんけど、方や西部劇の大スター。『駅馬車』でトップスターの仲間入りを果たし、数々の西部劇で活躍されましたね。『黄色いリボン』『アラモ』・・・いずれも私が生まれる前の作品ですね。ジョン・フォード監督とのコンビが特に印象的ですね。

方や青春映画のスター。『ラスト・ショー』でデビューしてから、精悍な役柄が多かったジェフ・ブリッジス。『キングコング』のリメイクにも出てました。しかしこの人、あるときから地味な印象に陥りますね。『天国の門』。地味だなー。でもってコーエン兄弟と縁ができてさらに不思議な堕落した存在が印象づけられます。『ビッグ・リボウスキ』だったかな?

だからこの作品の主人公として見るジェフ・ブリッジスと、かつての大スタージョン・ウェインが活躍した『勇気ある追跡』はまるで印象が違いますね。同じ酔っ払いの保安官なのにね。

ですが、なぜか今回のジェフ・ブリッジス、かっこいいんですね。かっこいい。もちろん酔っ払いのダビダブ腹の保安官ではありますが、彼の最近の作品イメージからすると異様とも思えるかっこよさ。

で、

コーエン兄弟作品の特徴をさかのぼって整理すると

1、醜さ 2、犯罪 3、映像美

まあ、細かく見ればいずれもこの映画の部分部分には示されているんですが、コーエン兄弟らしからぬ美しさを強調した映画だったと思います。

それから、この映画に出てくる魅力的な少女。彼女のこの映画に占める存在価値はとても大きなものなんですけど、コーエン兄弟の過去の作品にない正義感があふれていて、少し違和感を感じました。

なんで彼らはこの映画を撮ったんでしょうね?

最後に少女が歳をとって再び主人公の保安官を訪ねるシーンがありますね。その前のクライマックスで少女が蛇に噛まれて毒をもらって腕を無くしてしまった、ということが明らかになるシーンです。

このシーンだけがコーエン兄弟らしさですね。腕のない女性が過ごした30年余り。この間に彼女がどのような人生を送ってきたのかが、最後の少ないセリフからわかるような気がします。

強気で誰をも寄せ付けない強さ。腕がなくても生きてゆける強さ。西部劇のこの時代の女性としてはかなり異質な存在だったでしょう。そんな彼女が昔を懐かしむように保安官を訪ねますが、すでに保安官は死んでいるんですね。この無常。でも彼女はそんなことすらおかまいなしに、再び歩き始めます。

強い女性の弱さを少しだけ示して終わるこの厳しさ。

コーエンらしさはここだけでしたね。

でも全体としてはすばらしい映画。アクション映画としてもファンタジーとしても十分楽しめる映画でした。

(評価:★4)

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