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[コメント] アレクサンドリア(2009/スペイン)

迫害される側からする側に回るキリスト教徒を描く珍しい、真摯な映画で、人やその尊厳とは何かを考えさせられる。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 上空からアレクサンドリアの街を空撮するシーンが幾度も出てくるのだが、海岸ギリギリのところにも街が建設されていて、「ああ、この街はヤバいよ」という想いを無意識に抱いてしまう。あの日以来、被害の及ばぬ地域で暮らしている自分にも、心的な影響が皆無ということはない。

 それはともかく、はじめ異教徒だった勢力が、時の権力の矛盾や、弱者に犠牲を強いていることを暴いてみせ、民の支持を得、やがて主流に昇りつめると、今度は異端を迫害する立場に転変していく、という様を、キリスト教を素材に描ける公正さが素晴らしい。(主流を取る前の)異端・キリスト教徒には、黒装束を着せるといった、細部にも容赦がない。大河ドラマ的な悠長なノリが間延びに感じる瞬間もなくはないが、おおむね、見れる。もちろんレイチェル・ワイズは美しい。ここでも女優の趣味が共通するアメナバール監督を、親しみを込めてアレハンドロ、と呼ばせてもらおう。

 ラストのシーケンスは、ダオスがヒュパティアに抱いた崇敬の想いは奴隷時代に感じていたことだから、奴隷でなくなった今その感情を否定するのはたやすいことだし、否定するだろう、でも否定してほしくない(そういう展開を用意してほしい)と固唾を呑んで見ていた。自分の手で殺す(必要以上の苦痛を感じながら死なせたくない)というオチは、う〜む、ぎりぎり受容可能な結末だ。

 ということで、★4つだよ、アレハンドロ。

80/100(11/04/16記)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)水の都 ヴェネツィア シーチキン[*]

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