[コメント] 八日目の蝉(2011/日)
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最後のシーン、井上真央の「この島に戻りたかっただけなのに」でヤラれてしまった。どうしてそんな当たり前の願いが叶えられるまで、彼女は途方もない遠回りをしなければいけなかったのか。普通に家族を愛して普通に誕生日を祝い、普通に生まれ育った場所を訪れる、そんな自然なことすら特別な意味を持ってしまって、願いを押し殺してひっそりと生きなければいけない女子大生って……あぁ…思い出すだけで鼻水が…。普通と特別の違いって何なんだろうとつくづく思う。単にある属性で分類した時に数が多いか少ないかの違いだけだろう。7日で死ぬ蝉も8日で死ぬ蝉も、どちらが可哀そうとかどちらが幸せとか人間はいろいろ意味づけをしたがるけど、当の蝉にとってはどうでもいいことなのではないのだろうか。だって蝉って、5年も10年も地下で暮らしてるんでしょ?1日寿命が長かったから何なんだよ。短い成虫の間に子供を残せていれば幸せだろうし、残せていなかったら哀しいだろうし、子供がいなくても餌をたくさん食べてお腹一杯だったらやっぱり幸せだろうし、八日目の蝉もそういう当たり前のことを感じながら8日目を生きてるのではないだろうか、と思う。特別に見える誰かがいても、放っておいてあげようよ。
人と人のつながりって作るものではなくて育てるものなんだなぁと改めて考えさせられた作品だった。誘拐した子供に対する母性も不倫の愛情も誉められたものではないけれど、育ってしまった関係性には意味があるし、それを絶たれるときには誰かが不幸になる 。
井上真央ってあまり良く知らなくてコメディの人だと思い込んでいたけど、想像をはるかに超える熱演で、蒼井優が長年防衛してきた私的ランキング1位の座が危なくなってきた。あと、小池栄子の自然な怪しさを狙い澄まして演じる力はやはり本物だ。『接吻』よりさらに怪しくなってる。永作博美は相変わらず最高に永作博美で、満足。
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