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[コメント] 終着駅(1953/伊=米)

どこからどこまでがエキストラなのかわからない構内の人々。全編ロケのせいゆえか、ハリウッド女優であるジェニファー・ジョーンズの(やや素で)泳ぎまくる視線から、言葉のよくわからない異国におけるヒロインの不安な心情が巧く伝わってくる。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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富裕なアメリカ人であるヒロインから施しの申し出を受け、毅然とした態度で断る出稼ぎ帰りの貧しいイタリア人夫婦。待合室のベンチに腰かけ、きちんと帽子をとって静かに親を待つその息子たち。

大好きな叔母の身を案じ、子どもながらもすっかりナイト気取りな(てゆーか、どさくさにまぎれて叔母さんの胸にかなり長く顔を埋めてるんですけど)少年。

今から逮捕する女にまで色目を使い、そのうえ平気で通りすがりの人々にいやらしい嘘を言う警官。その好色的な妄言を信じ、出歯亀よろしく署内を覗き込もうとする好奇心むきだしの男。

ヒロインには夫や子がいることを知り、その将来性を案じて情けをかける警察署長。「その報告書は一生懸命に書いたものだ。」などと直前にぶっときながらも、その署長の慈悲にジェスチャーひとつで同意する部下。

細かいエピソードに託されたイタリア人としての矜持やあえて活写したのであろう恥部に、デシーカの、祖国とそこに暮らす人々への真摯な愛情を感じた。卑屈にもならず、そうかといって過度に美化することもなく。まさにネオリアリズモならではの魅力とでも言うべきか。

最後の場面、倒れた男に「大丈夫ですか?」と声をかけた男が英語を使っていたことにも、何か深い意味があるのだろうか?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)24[*] けにろん[*]

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