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[コメント] 大鹿村騒動記(2011/日)

大鹿村というユートピア。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この作品は田舎の風景とそこの住人たちののんびりした善良さを楽しむための作品なのだと思う。そこにシリアスなものはない。リニアの誘致での村民の対立も、寝取った女が痴呆症になって手に負えなくなるという逸話も、トランスジェンダーもすべては喜劇的やりとりの糧となっている(※)。ベーシックな生活に余裕がある、エンタメ閾値の高い人たち向けでなく、むしろ日々の生活に倦みや苦しみを感じ、そこからしばし逃避するためのユートピアとしてしか成り立っていない。それこそこの作品のモチーフたる素人歌舞伎のように。

現実逃避っていうのはあまりいい意味で使われないけど、そもそも映画を始めとするエンタメは、『カイロの紫のバラ』の主人公のような人が現実逃避するためにあるべきなのかも知れない、そう思わせるような、昨今では珍しいほどテーマ性やら登場人物たちへの共感もなく、ただ自分とは関係のない人々の愉快で人情味のあるやりとりを眺めているだけのような作品だった。

三國連太郎が初登場するシーン。縁側で大先輩の前で話を聞く原田芳雄、岸部一徳という絵ずらを見て思わず笑ってしまった。こんな寒村によくぞ、これだけの演技上手の人が住んでいたよな、そりゃ300年も続けようって気になるよなって。

※ちびくろサンボや、保毛尾田保毛男などは極端かも知れないけど、「不適切な表現が含まれますが,作品のオリジナリティを尊重しそのまま放送します」的なテロップを見ない日はないくらい時代の道徳基準は変化が激しい。この作品の痴呆症やトランスジェンダーの描き方もそうだけど、佐藤浩一が台風で土砂に埋まってっていうシーンの屈託のなさにここ10年の時代の隔たりを感じてしまった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)死ぬまでシネマ[*]

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