コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 黄色い星の子供たち(2010/仏=独=ハンガリー)

サラの鍵』はまだ見ていないが、と前置きをした上で云えば、数多あるユダヤ人迫害映画とこれを決定的に分かつのは「自転車競技場」の存在だ。空間的なスペクタクル性もさることながら、状況の混沌を炙り出す演出が厳しく、フェアだ。収容所にもかかわらず、ここでの子供らは無邪気に駆け回りさえする。
3819695

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







人々の別れ、それもただの別れではなく、おそらくこれが今生の別れとなるだろうという瞬間をいくつも持った映画であり、ローズ・ボッシュはそれをもっぱら「まなざしの交換」によって画面に刻もうとする。それはもちろん真っ当な、あるいは敢えて悪しざまに云うならばありふれた演出だが、やはりそのまなざしの強さには心を打たれないではいられない。とりわけ終盤、主人公格の少年ユーゴ・ルヴェルデが収容所を脱走するシーンにおいてメラニー・ロランと交わすまなざしは、もはや子供のものではない。彼は病で弱った親友を置いていかなくてはならないのだ。この非人間的に苛酷な状況は子供が子供でいることを許さなかった。だから、それは成長だ。痛々しい成長だ。ラストシーンの「甘さ」もつまりはそういうことだろう。生き残った子供らはそれでも成長する。してしまう。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。