[コメント] BIUTIFUL ビューティフル(2010/メキシコ=スペイン)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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これを観た後では、『生きる』はオプティミストの寝言とすら呼べてしまうハビエル・バルデムの舐める苦汁の重さ。それは日本という箱庭の楽園では感知しづらい残酷さをもって観客に重い反芻を強いる。
実際、バルデムは志村喬のように幸福を胸に秘めて死ぬ機会をついに与えられなかった。単一民族国家という幻想が、それなりに実感をこめて国民に受け入れられてしまうこの国には想像もつかない、「どん底加減」を抱える大部分の大都市に共通する人々の実感をリアルに投影させた描写なのだろう。幸福を知らなければ不幸続きでも死にはしない。それが例えばバルセロナに生きる移民たちの偽らざる本音であるようだ。
でも、それでもやるしかない。幸福はやはり誰でも欲しいからだ。そうして運動した結果がこれである。それを眺める自分には「あちゃー、やっちまった」と目を背けるのが正直なリアクションであるのだけれど、バルデムは負けずに行動し続ける。そうしたバイタリティは切実に欲しいと思う一方で、そんなものがなくても生きてゆけるわが国の現状に安堵するのが、幸福な国に生まれた無責任男の心中である。
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