[コメント] イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ(2010/米=英)
まず、映画として抜群に面白い。知的探究心をくすぐるアート映画であり、物事の核心を突くドキュメンタリー作品でありながら、エンターテインメントとしての心配りを忘れていない。敷居は低く、志は高く。よく出来た娯楽作である。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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特に編集のテンポが素晴らしい。バンクシーがカメラの前で苦笑する時の“間”。笑いをこらえてこらえて…ついに噴き出す。そんなタメのある“演出”が随所に施されており、そこにバンクシーの映像作家としてのオリジナリティをみた。
登場してくるキャラクターもいちいちユニークなんだが、中でもミスター・ブレインウォッシュのチャーミングさが本作の諧謔味とアイロニーをいっぺんに背負っている。『キング・オブ・コメディ』のデ・ニーロしかり、憎めない勘違い野郎のサクセスストーリー。先の見えない展開も◎な娯楽作。
…であると同時に、観客に強烈なパンチをくらわせる啓発的作品でもある。
グラフィティアートの創生からショービジネス化までを通して描かれるある種滑稽なまでのメディアによる情報操作と価値観の流転の成れの果て。アートとは何なのか?オリジナリティとは何なのか?世の中の価値基準など“洗脳”に過ぎないのではないか?ある人は言った。「僕は時間の洗礼をうけた芸術しか信じない」
映画館はアーティスト気取りの若者で溢れていた。彼らに侮蔑とうっとおしさを感じながら、彼らと変わらない自分自身の傲慢さにも恥じ入る…29歳の夏。
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