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[コメント] ニューイヤーズ・イブ(2011/米)

どこがどうと具体的に指摘できるわけではないけれど、この映画の仕組み、役者の扱いにはどこかしら内輪乗りの印象を覚える。だからと云って私が疎外感を受けたというのではない。およそ一〇〇年間にわたってハリウッドが展開しつづけてきた恐るべき戦略は、全世界をハリウッドの内輪に取り込んでしまう。
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ジョビ氏が歌う“I Can't Turn You Loose”のイントロが流れてくるだけでどういうわけか涙が流れてしまう。私の涙腺がもはや末期状態であることは否定できないにしても、この幸福感は嘘ではない。いいかげんで強引でもあるゆえに批難の対象になりさえするアメリカ映画らしい幸福感は、しかしここでゲイリー・マーシャルの演出が示している通り、世界と人生を是が非でも肯定する意思に基づいている。

贔屓目を隠さずに云えば、ヒラリー・スワンクアシュトン・カッチャーミシェル・ファイファーキャサリン・ハイグルザック・エフロンジェシカ・ビールがいい。もちろん不満がないということはなく、ハイグルにはもっと気の利いたシーンを用意してあげてほしいし、エフロンも短髪のためかしら、いささか精彩を欠くようにも見える。一方で激しく見直したのはカッチャーだ。どうにも映画サイズのスター俳優ではないと見くびっているところがあったけれど、何気ない表情や挙措ひとつで密室の芝居を持ちこたえてしまうあたり、私が思っていたよりもずっと凄い人かもしれない。

モブに埋め尽くされたタイムズ・スクウェアの祝祭的壮観は云うまでもないが、マーク・フリードバーグの手になる人肌の暖かみを持った屋内美術も映画の幸せを保証している。

(評価:★4)

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