[コメント] ヒミズ(2011/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作を観るのにはかなりの覚悟が必要だった。なんせあの『冷たい熱帯魚』を劇場で観てしまったことで、かなり精神的にもダメージを与えられただけに。
どこまで過激にやる?それでも海外で評価されるくらいだから、残酷な描写はなかろう?それでも不安…といった嫌な考えがぐるぐる頭を巡りつつ、それでも意を決して劇場へと向かった。
結果を言うなら、これは実にフツーの作品だった。正直、観終わるまで抜けなかった緊張感が最後の最後で本当にほっとした。
そして映画としてとても優れた作品でもある。
かつてATG作品にはこう言ったタイプの作品がいくつかあった。つまり、未来を棒に振るような行いをしてしまった若者(場合によってはもっと高齢な場合もあるけど)が、様々な葛藤を経て立ち上がっていくというもの。一人の人間が成長するまでを様々な角度で描いていくことになるのだが、これは70年代を代表する邦画の基本とも言える構成でもある。
ところが80年代以降こう言った作品はあまり省みられなくなっていく。ハリウッドの派手な作品に触発を受け、それを真似しようと言うアクションもの、あるいはもっと小さく小さな共同体における微妙な人間関係を描く作品がメインになっていき、丁寧に人間の成長を描く作品は少なくなっていった。
それが変わってきたと見られたのが2010年あたりになってからだろうか?まさしくそのフォーマットに則った『悪人』(2010)、『ヒーローショー』(2010)などが出てくるようになり、何となく邦画も変わっていくんじゃないか?と思っていたのだが、その考えもあながち間違ってなかったか。と本作を観て思えた。たぶんこのタイプの作品はこれから着実に作られ続けることになるのではないだろうか?邦画の変化を如実に示したかのような感がある。
これが作られるに至ったは日本という国に未来が見えなくなってきたことが一つの理由となるのかもしれない。更に2011年には311の東北大震災もあり、ますますこの傾向は進んでいくと思われるし、必要とされていくのではないだろうか。その先鞭を付け、これからの邦画の方向性を確立していく、その過程にある作品とも言えるだろう。
ただ、それを作ったのが園子温監督というのが一つの問題だろうか?この人は別に本人が邦画のメインストリームになろうと思ってるわけでなく、作りたいものを作り続けるというスタンスを崩さない人だから、描写の一つ一つがとかく過激で観ていて苦しい描写が次々と出てくるし、細部に細やかさがなくいい加減な描写も多い。いくつもの伏線がありながら、それを上手く消化できてないというか、あれだけ張った伏線を簡単に片付けすぎてしまった感もある。その辺の大ざっぱさが監督の魅力でもあるが、どうにも落ち着かせない気分にさせられたりもする。もう少しだけ丁寧に作ってくれたら傑作となり得た作品かも知れない。
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