また迷亭・伊丹十三、寒月・岡本信人、東風・篠田三郎、独仙・前田武彦、三平・左とん平と皆それぞれ適役だし、第一、仲代達矢の苦沙弥も細君役の波乃久里子も良いと思う。あるいは車屋のクロの描き方が侠気を感じさせてすこぶる面白い。石に鼻をぶつけて潰す様！猫の視線を表現した岡崎宏三の撮影も素晴らしいと思う。しかしこういった中にあって、金田の令嬢富子・篠ヒロコの描かれ方は到底赦せない嫌らしさ。どうして餅ばかり食わされているのか。許しがたい品の無さ。勿論、このキャラクターの品の無い様を演出しようとしたことは百も承知だが、私に云わせればこのような演出こそ映画の品性を落とす馬鹿げた演出なのだ。野球ボール事件の描き方も同様に非道い。