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[コメント] ヒューゴの不思議な発明(2011/米)

つまりは、スコセッシはメリエスになりたかった、スコセッシ版『ニュー・シネマ・ パラダイス』を作りたかった。それだけだろう。
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**ネタバレ注意**
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本当にスコセッシの作品?と思ってしまうほど彼のカラーがない。それどころかノス タルジックで感情駄々漏れである。さほど奇をてらったような内容でもないし、あの 機械仕掛けの人形も思ったほど大きな役割を与えられているとは思えない。時間は 緩々流れていくし、物語の起伏もほぼない。しかし、自分は好きである。たゆたう様 な時間の流れと控えめだが効果的なCG、そして映像が実に優しい。自分は2Dで観た のだが、この作品ほど3Dで観たいと思った作品もない。

ラストのメリエス作品の畳み掛けはまさに『ニュー・シネマ・パラダイス』のラスト シーンを彷彿とさせ、胸に迫ってくるものはあのときとまったく同じだった。劇中、 写真技師に扮したスコセッシは、優しい笑顔でまさに好々爺である。スコセッシ翁も ついに過去がセピア色に見えてきたのか、優しいシャシンを撮るようになった。それ にキングスレーの威厳のある表情とふっと目尻を緩ませる顔の落差にもやられた。 それにしても歯車の噛み合う様に何故こんなに惹き付けられるのか。ピタゴラスイッ チでもインクレディブル・マシーンでも構わない。噛み合いの連鎖、噛み合いの作用 によって動き出す無機質にはワクワクする。時計台の中の冒険は過去の数多の作品の 中でも何回か取り上げられてきたがやはり見入ってしまう。ずるいな。

にやりとしてしまったのは、ヒューゴが夢で見た機関車事故のシーンである。あの事 故が実際に起きたのは1895年、場所はモンパルナス駅だ。当時の衝撃的な報道写 真が今も残っている。今回の作品の舞台は1930年代だし、駅もリヨンだから関係 ないのだけど、電車が落ちる角度も駅舎の風景も撮った角度でさえ同じなのだから、 あの事故をそのまま再現したい欲求を抑えられなかったのだろう。自分はこの有名す ぎる(と言われている)写真をMr.BIGのアルバム、「Lean Into It」で初めて知った のだから情けないが、見たときの衝撃は忘れていない。この作品で観られるとは思っ てもいなかった。

(評価:★5)

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