[コメント] ドクトル・ジバゴ(1965/米=伊)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
結局リーンのやっていることといえば、柱となる数名の男女に関わる運命のいたずらを、いくつかのシークエンスに分けて映画的に魅せようとしただけのことである。だから長い割には今ひとつスケール感が不足しているように感じつつも、何となく飽きることなく全篇を見通せてしまい、それなりにいい場面も多かったなという印象が残る方が多いのではないかと想像する。そして何かの機会にそれを再見するようなことがあれば、思いのほか伏線に富んだよくできた映画だったことに気付かれることであろう。ていうか、最近再見した自分がそうであっただけなのだが。
思えば現代から回想へと切り替わる部分のファーストカットは、壮大な山々を背景にした葬列であったが、あのスケール感が全篇を覆い尽くしているかというと決してそうではない。むしろ細かな細工の施してあるセット撮影がほとんどである。けれど、そんな中だからこそ、ところどころに放り込まれる素敵な四季の風景に、ようやく息ができたような思いを抱き、心奪われてしまうのだが、その思いを当時の社会主義国家に移行する中での市井の人々の思いにリンクさせ、観客に感情移入させる効果をも生ませたのも、やはり演出なのではないか。
また、ジバゴとラーラの最初の出会いも路面電車であり、その時点ですでに彼らはすれ違っていたり、17歳のラーラが自らの女性に目覚め涙を流した日こそ、彼女の夫となる指導者が初めて血の涙を流した日であり、そこがのちへと続く全ての悲劇の始まりの日であったり、あの名曲がバラライカによって演奏されていたりといった点も、初見時に何気なく見ていたら見落としてしまいそうになるのではないか。が、これらの運命のいたずらの数々を知り得たうえで再見してみると、また本作への見方も随分違ったものになってくるように思う。ていうか、最近再見した自分がそうであっただけなのだが(しつこい?)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。