[コメント] 脱出(1945/米)
ちなみにウィリアム・フォークナー46歳、アーネスト・ヘミングウェイ44歳の関与の度合いはイマイチ不明。
まあ、どうにもこうにも、おじさんたちがローレン・バコールにメロメロになって引き摺られた結果、ドラマとしてはほとんど破綻した映画になってしまったように思える。
そもそもからして女たらしのハワード・ホークスは、最初は思いっきりローレン・バコールに入れ込んでいたのが、この小娘はあろうことか朴念仁のハンフリー・ボガートに惚れる始末。撮影中にどんどんローレン・バコールの出番を増やしたのは、監督としての判断というより、もしかするとオトコとしての思い入れが勝っていたんじゃなかろうか。おかげで本来のヒロインだったドロレス・モーランは、いったい何のためにスクリーンに登場しているのかよく判らないような半端な存在になってしまった。
大幅な設定の改変やストーリーの省略で、アーネスト・ヘミングウェイ作品としてもほとんど意味不明。これじゃあどこが「持つと持たぬと」なんだかさっぱり判らないし。ウィリアム・フォークナーも、監督と友だちだから付き合ってるというレベルの仕事で、「ダブル・ノーベル賞豪華コラボ」など名ばかり(もっとも、ふたりともノーベル賞の受賞は後年のことですが)。最後にはハワード・ホークスもほとんど匙を投げて切り上げた?ような不始末な作品とも思える。
だが、それでも、あるいはそれだけに、この映画、個々のシーンには史上最高度の輝きがある。即興性を重視したという監督の演出に応えて濃密な時を重ねて行くハンフリー・ボガートとローレン・バコールだけでなく、スクリーン上で豊かに息づくウォルター・ブレナンやホーギー・カーマイケルの存在感! なんて豊かな「不始末」なんだろうか。
まあ、ハワード・ホークスとウィリアム・フォークナーは、同じハンフリー・ボガートとローレン・バコールのカップルをフィーチャーした次回作『三つ数えろ』でキッチリとこのドラマとしての「不始末」の落とし前を付けてくれて、さすがなんですが。
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