[コメント] 夢売るふたり(2012/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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話の大筋は旦那を支えようとし、同時に自分のコントロール下に置こうともがく妻の話とまとめることが出来ると思う。つまりは「依存」の話である。
「コントロール下」はあまり強調されないが、端的にそれが出るのが棚橋咲月(田中麗奈)をだますエピソード。里子(松たか子)の電車の中でのスポーツ紙越しの目線、電話でしゃべる内容を貫也(阿部サダヲ)に全て指示している部分に良く出ている。このように掌に乗っているうちは夫婦のシーンは微笑ましくもある。
ところが、劇中何度か里子の想定していない事態が起こる。小料理屋の火事、睦島玲子(鈴木砂羽)と貫也の不倫、皆川ひとみ(江原由夏)に対しての貫也の「執着」、ラブホテル・病院での偶然の出会い、ターゲットの家族との親交、そして子供による傷害事件。小料理屋の火事は異なるが、これらは里子がいなくても貫也が「上手くやっていけること」を示すエピソード群であり、その度に里子が「荒れる」シーンであったり彼女の孤独感を強調するシーンが挿入されている。そのバランスが一面笑ってしまうほどに「恐ろしい」のである。
その分、ラストは少しつめ切れていない印象もある。包丁から検出されるであろう子供の指紋・掌紋、および子供の返り血の浴び具合を貫也の口八丁で誤魔化すのははやり無理があると思う。これは震災以降に西川監督がラストを変更した(※1)ことが影響しているのであろうと思うが、これによって物語が破綻しているわけでもないので、さほど気にはならないとも思う。
西川監督が一貫して描く普通の人たちの話はやはり面白い。そのことを再確認できる作品であった。
※1 http://www.1101.com/nishikawa2012/2012-09-06.html
(2012.9.10 tohoシネマズ浜松)
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