[コメント] 拳銃(コルト)は俺のパスポート(1967/日)
全盛期のフランス映画を志向し続けた日活アクションの、たぶん最高の達成。後半に進むにつれて加速度的に面白く、切なくなる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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港町、決闘、別離。宍戸錠は細身のジャン・ギャバンのよう。唐突にロングで犯行使用車を水没させるショットや、霧をワイプするクーペで夜を明かすヤクザのワン・ショットは北野武に、時限爆弾の詳述は長谷川和彦に、口笛のテーマは「ルパン三世」に影響を与えたに違いない。誰にも笑顔を見せない小林千登勢の、樽に映る微笑だけで宍戸に惚れているのを示す簡潔さに痺れる。決めるべきときに素晴らしく決める、90分物としてとても充実した映画。
生活疲れを漂わせる小林の挙手の的確なこと。よくあるスパイ物の出だしから、特に彼女の登場以降、映画が後半になるほど面白くなる調子が素晴らしい。鶏を飼っている宿屋、割れるとささくれ立つガラス窓(ベンツの上等なフロントガラスの説明と対照されている。この件の、偽装音に驚き塀を見上げる小学生のショットのユーモアは最高)など風俗描写も優れもの。だるま船あるいは水上生活者が日本にもあったと思い出させてくれるのはさらに貴重で、この件があるからこそ、作品は単なるコピーを脱している。殺し屋の草薙幸二郎のニヒルも忘れ難い。
小林らをほったらかしにする唐突なラストは、フランス映画なのだからあれでいいのだ。殺伐としているなあ。決闘のあとそのまま海に飛び込んで泳いで客船に追いつこうとするのかと思ったが、そんなロマンチックな映画ではないのだった。
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