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[コメント] アルゴ(2012/米)

「本当にあった人質救出作戦」に勝るものなし。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







唯一互角に勝負したのは、当時の美術の再現だと思う。キャスティングを実在の人物とそっくりな俳優にしたり、報道写真を元に群衆の配置なんかもかなり忠実にやっているが、まあそれは監督の趣味の問題で別に違っていたって大差はないことだ。大事なのはどこでロケをしたのかわからないが(イランではないらしい)70年代から80年代に移行するころのイランぽい雰囲気がよく作られていたこと。中東の中ではかなりイスラム戒律に対する考えがゆるく、欧米よりのライフスタイルが群衆の服装なんかに感じ取れる。

この作品を「事実をベースにした」コメディ、あるいは、活劇として調理する方法をとらず正攻法のポリティカルドラマで撮る方法を選択し、面白いものを作れると判断した監督の眼力には、かなり盛ってる部分はあるとはいえ、敬服する。美術に力を注いでいるのは、「やりたいことをやるために」「やらなければいけないことはやる」という、正攻法でいくとした監督の信念が宿っている。「だいたいこんな感じで」と体裁だけを整えたモノづくりでないことが伝わるからこそ、作品が観客に届くのだと思う。

以下余談。

エンドクレジットのところでカーター元大統領のコメントが紹介され、その中に「高潔な国家としての平和的な方法で(救出をやりとげることができた)」とあったが、国家は高潔であるべきだ、という当時の政治家の言葉にハッとしてしまった。この理念、議事堂襲撃をSNSで煽り、『ユナイテッド93』でハイジャックされた民間機の国会議事堂突入を命がけで阻止した機内に居合わせた乗客の魂を自ら汚したり、数十年後に非公開文書がきちんと公開され本作のような事実がきちんと明らかにできる社会の健全というものを、保身のために官僚に圧力をかけて文書を改竄・廃棄させてしまうようなことを自ら行う現代の政治家たちに1ミリでもあるのだろうか?

(評価:★4)

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