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[コメント] 映画 鈴木先生(2012/日)

桐島』が学校生活の「今」を切り取った傑作だとしたら、本作は学校生活の「今」から「未来の一面」を見た傑作である。
Master

**ネタバレ注意**
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原作、ドラマともに未見です。

この状態で観ても、非常に面白かった。ボーナストラック的側面が全くないわけではないが、「お約束」をわかっていないとついていけないような展開・描写は皆無であり、このことは大いに評価したい。

また、本当によくここまで描いたと思う。

本作中で起こる事件は、ある問題に対して表層的な解決に走り、結果として排除される人が「逆襲」するという流れになっている。その上でお互いの言い分や状況をしっかりと提示しているところに制作側の覚悟が見える。例えば勝野(風間俊介)が家族から阻害されていることはカットしても(田辺(浜野健太)のような描き方をしても)話は成立するが、彼が暴挙に出ることについて一定の説得力を持たせるためにはこの描写が重要であり、そこから逃げなかったのは正しいのである。

また、生徒会選挙のエピソードも興味深い。「面白半分で有効投票をすること」による過剰な効果を経験した生徒を出すことによって一見正しい「公正な選挙」というお題目のマイナス面を提示している。この視点もなかなかなかったものである。

つまりは、現状の社会問題に対してとても面白いアプローチをしているということである。この事自体が邦画においては稀有であり、本作の評価を高いものにしていると考える。

こういった作品は存分に評価されるべき。良い仕事であった。

(2013.1.12 109シネマズ湘南)

(評価:★4)

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