[コメント] 四十七人の刺客(1994/日)
不器用な一匹狼・高倉健。それが赤穂藩筆頭家老という組織のリーダーを演じるという・・。しかもこの「忠臣蔵」は、大石の仕掛けた謀略戦という設定。なんとミスマッチなキャスティング。たぶん東宝の「映画生誕100周年記念映画」とかいうイベントのためにヒットが義務づけられ客の呼べるスターが必要だったためだろう。したがって随所にミスマッチな違和感が漂いまくる結果となった。
まずは、ラブシーン。黒木瞳、妻の浅丘ルリ子、宮沢りえと3人も絡むのだが、どれもかみ合わない。黒木瞳とは入浴シーンで始まり、健さんの年に似合わぬ頑強な裸体にエロな香りが漂うのだが、黒木瞳を抱きしめた瞬間、ぎこちなさで画面いっぱいに「気まずさ」が漂う。最悪は宮沢りえとの絡みで、どうみても親子にしか見えない。宮沢りえのふっくらした瑞々しさが今となっては貴重な映像。そもそもラブシーン自体が、この謀略戦にミスマッチな、大作の彩り添えでしかないミスマッチ。
一番のミスマッチ場面は、健さんと中井貴一演じる色部が屋台船の中で対面するシーン。敵の知将と初対面した作戦参謀は緊張感たっぷりに敵の品定めと腹の探り合いを演じているのだが、そこに対座しているのは「自分は、不器用ですから。」とぶっきらぼうに言い放ちそうな健さんだったのだ。この噛み合わなさは絶品。気まずさで身悶えしそうだ。
市川昆に時代劇。吉良側には、石坂浩二、西村晃、森繁久弥など様式美を作り上げるに十分な役者陣。しかし、赤穂側には、宇崎竜童、岩城晃一、坂東英二などセリフがベタな方々が紛れ込んでいて、ときどきミスマッチな空気をかもし出していた。
仮に適材適所な配役がなされてゴシックな市川映画が完成したとしたら、予定調和な懐古趣味にとどまっていたかもしれず、これはこれでスリリングなミスマッチが楽しめる映画ではある。
しかし、市川映画のライティングをはじめとする映像美は捨てがたい。「晩年」が近づいてきた御大だが、「市川組」として人材を独占せず、スタッフの供出や後継者育成をして欲しいものだ。
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