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[コメント] 終戦のエンペラー(2012/日=米)

ここでも本音と建て前が出る日本終戦時の史観
torinoshield

責任のあいまいな日本社会。昭和天皇でなくとも現代の日本社会で福島原発事故は誰の責任なのか不明確なまま。こういう事はその時点で騒ぐだけ騒ぐのだが責任を押し付けたい相手をターゲットにする行為が止まらず非難の応酬で「昔の話だから忘れよう」になってしまう。

そもそも天皇制は1000年前ならともかく鎌倉幕府以来主権は武士、つまり武力勢力がほぼ手中に収めた状態が終戦まで続いている。ただしこういった主権にはハクが非常に大事。「俺、誰々に認められて責任背負わされてるんで」(珍走団風)。誰々とは卒業した番長、いやもっと偉い市長とか県知事だったら笑い話だ。日本にはこの為に天皇がいる。天皇が認めた人間でないと日本のトップには100%なれない。最低1500年これを守ってきたのには明確な理由がある。

これは最高裁判所の判断だから、に等しい。日本で武力勢力同士が拮抗した場合、一番大事なのは天皇をどちらが認めるか、だ。これで武力勢力以外の人民である日本の国民が一斉に天皇が認めた側につく。これを映画だと2000年と言っていたが1500年続けているのが日本だ。他の国はこれがないので最も強い武力勢力が制圧すると同時に前の国は消える。

ここから理解出来るのは天皇は「もっとも信任の厚い国民代表の裁定者」だという事だ。大統領の様な最高責任者ではない。ここからアメリカに対して開戦を「天皇が大統領ばりに」命令を下すのはありえないのは分かるだろう。旧陸軍がいくら強硬に開戦を押し通そうとも天皇(日本国民の総意)の認定がなければそれは無理。結果真珠湾攻撃は軍部が責任を持って進言し天皇(国民)がそれを追認したという手順となる。

先に上げた福島原発で言えば官僚が原発を推進し政府(国民)がそれを追認する形だ。つまりアメリカは天皇を裁くのはイコール日本国民全員が有罪、という構図に気が付いた。福島原発事故で言えば責任は日本国民全員にある(=東電と民主党の責任ではない)と言っているに等しい。

この認識が鮮明にアメリカ側に理解できた時点であのマッカーサーと天皇の会談が行われる。天皇を絞首刑、つまり日本国民を全員絞首刑とした上でアジア全体に吹き荒れる民族自立→共産主義の流れを果たして止められるか。戦後直後から今に至るアメリカの「日本は特別な同盟国」という妙な持ち上げは天皇に認められるアメリカ政府、という1000年の日本の政治構図にアメリカもサラッと加わったに過ぎない。マッカーサー(自称次期アメリカ大統領)と天皇の写真ではマッカーサー自身全くそういうトラップに自覚なしな感じがあるので余計象徴的でやられた感がある。

東条がただの白痴扱いになっているが彼の終戦後の先見性は当たっている。彼をアドバイザーにしていたら朝鮮戦争、ベトナム戦争もなく無駄な人的損失もなかった可能性が高い。結論としてはアメリカは余りにアジアに関して当時無知だった。

(評価:★3)

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