[コメント] 許されざる者(2013/日)
渡辺と佐藤の芝居は存分に「ベテラン芸」を魅せ、柄本と小池は想定の域を出ないもどかしさがあるものの、柳楽と忽那の難読コンビが新境地らしき「新鮮」をみせる。笠松則通の鈍重な画は撮影賞もので、今の邦画界の正統的水準を高レベルでクリアする教科書映画。
なのだが、教科書は「間違い」がないぶん、いたって退屈なものだ。
イーストウッド版の巧みで高等な模倣の域を出ていないと言い捨ててしまうのを、あえてこらえて言及するなら、前作の彼岸が「西海岸」というフロンティア=国家幻想に対する個的市民暴力の虚しさに帰結したのに対して、本作の暴力が組織への忠誠と個人の死への恐怖心という心のありように収斂されていくところに、良くも悪くもニッポン的矮小=独善的美意識が漂う。
『悪人』(2010)といい、本作といい李相日は、平成の黒澤明にでもなるつもりなのだろうか。私は李の作品のなかでは『69 sixty nine』の無邪気さが一番好きなのだが。
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